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【第2部】 第30話 尾行大作戦!①

last update 最終更新日: 2025-10-07 19:00:44

 ついに……この日がやってきた。

 龍と果歩さんのデート――いや、考えたくもない。

 私は朝からそわそわしっぱなしで、何十回も廊下を行ったり来たりしていた。

 だって、落ち着かない!

 考えれば考えるほど、いてもたってもいられなくなる。

 だって、あんな可愛い女の子だよ?

 好きな人と会うとなれば、そりゃあ気合い入れてお洒落してくるに決まってる。

 そんな姿を見たら……男は誰だって。

 ああ、ダメだ。

 想像するだけで胃が痛い。

 いや、龍に限って私を裏切るなんてことはないと信じてる。

 信じてるけど……!

「ぬわ~っ!」

 どうにもならないこの気持ちに悶え苦しんでいると、不意に背後から声が飛んできた。

「ど、どうされました?」

 びくりと肩を震わせ振り返ると、そこには龍の姿があった。

「りゅ、龍っ!」

 思わず名前を叫ぶ私に、龍は驚いたように目を丸くする。

 けれど、すぐにその表情はいつもの優しい微笑みに変わった。

「朝からずっと、落ち着きませんね。……もしかして、不安ですか?」

 図星すぎて、私はそのまま固まった。

 しばらく瞬きさえ忘れたあと、じわじわと顔が熱くなっていくのが自分でもわかる。

「ははっ、お嬢は本当にわかりやすい。

 そういうところも、可愛くて好きです」

 ニコッと笑って、サラリと……。

 朝からそんな殺し文句言うかな。

 龍ってもっとこう、硬派でクールなイメージだったような……。

 私と付き合うようになってから、どんどん変わっていってる?

 そんなことをグルグルと考えていると――

 ふいに龍の瞳に熱が宿り、じっと私を見つめてきた。

 ゆっくりと手を伸ばしてきたかと思うと、優しい手つきで、そっと私の頭を撫でていく。

 その仕草から、彼の深い愛情が伝わってきて。胸がいっぱいになる。

「大丈夫です。

 私の心は流華さん
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